オトメベラの屋久島での社会構造

【ポイント】 一湊タンク下No.1
【水温】 22.2℃
【透明度】 15m
【海況】 凪ぎ
【天候】 晴れ
【潜水時間帯】 14:48-16:40
【潮まわり】 05:24 174cm 満潮 / 10:55 108cm 干潮 / 16:31 192cm 満潮 / 中潮(月齢:11.9)
【日の出・日の入】 日出07:01 日没17:17

今日も午後から海へ。。。

メスとして産まれオスに性転換する「二次オス」と産まれながらのオスである「一次オス」とが存在する種類で、ペア産卵と群れ産卵、2つの産卵方法があるベラにはニシキベラやオトメベラ、コガシラベラ、ホンベラなどがいるのだけど、最近この連中が僕の中で熱い。(笑)

この手のベラは一般的に、TP体色(オス特有の派手派手体色)の二次オスがペア産卵をして、IP体色(メスと同じ地味地味体色)の一次オスが群れ産卵を行う事が知られている。
当然、ことはそれほど単純ではなく、環境によってはこの2つの産卵方法が入り乱れてゴチャゴチャになったりもする。

ただ、そうは言ってもペア産卵のオス:メスの比は「1:1」、群れ産卵のオス:メスの比は「多数:1」が普通だと思っていたのだが、和歌山や高知の同業者の話ではオトメベラやニシキベラの当地での群れ産卵はオス:メスの比が「1:多数」だという。。。
何とオスメス比が逆らしいのだ。(ーー;)

また、久米島・エスティバンの川本さんが、オトメベラにメスや一次オスのサイズの子の体色がIPからTPに変わったという話をされていたのだが、よくよく考えると屋久島でもたまに若魚サイズの子が真っ青なTP体色になっているのをたまに見かける事を思い出した。
今まで考えたこともなかったのだけど、そう言えばこいつらって一体何者なん?(ーー;)
一次オスなの?二次オスなの?それともまさかのメスなの?(笑)

こんな感じで普通種なのによく考えると何だか謎だらけのオトメベラの生活史。。。
場所(環境や地域)によって、状況(生息数やオスメス比)によって、産卵方法が大きく変わるのは想像できるが、生活史までもが違うのではないだろうか?と思ったわけだが、まずは屋久島でのオトメベラの社会構造を調べてみようと思った。

ちなみに屋久島ではオトメベラの群れ産卵は不思議と見たことがない。
あまり潮通しの良いポイントに僕自身が行かないからかもしれないけど、今現在、潜っているポイントでは今のところ見たことはない。

屋久島では基本的にオトメベラはペア産卵が主流だ。
大きなTPオスが1匹いて、メスを10匹くらい囲っているハーレムが、例えば僕がよく入るホームグラウンドの一湊タンク下には4つくらい(3つかも?)ある。
お互いのテリトリーがハッキリ分かれていて、平和なペア産卵をしているという印象だ。

最近はまったく真っ青なTPオスを見ていなかったので、もう繁殖期は終わったのかな?と思っていたけど、注意してTPオスをよく見てみるとそれなりに青っぽくはなって、メスも引き連れて泳いでいた。
もしかしたら午前中にまだ産卵をしているかもしれない。。。
ただ、午後の時点では、ちょっとでもメスから離れると真っ青な体色は褪せて、メスと同じような体色にスグに戻ってしまった。
特に追い掛け回しているとスグに褪める。。。(笑)

(下2枚は同一個体)

やや興奮色の西地区の二次オス(18cm)
やや興奮色の西地区の二次オスA(18cm)
興奮色が醒めた西地区の二次オス(18cm)
興奮色が醒めた西地区の二次オスA(18cm)

(下2枚は同一個体)

やや興奮色の東地区の二次オス(18cm)
やや興奮色の東地区の二次オスB(18cm)
興奮色が醒めた東地区の二次オス(18cm)
興奮色が醒めた東地区の二次オスB(18cm)

二次オスが引き連れていた巨大なメス?(15cm)
二次オスが引き連れていた巨大なメス?(15cm)
ちなみにこのTPオスが引き連れているのは多分、間違いなくメスだと思うのだが、中には先頭を行く立派なTPオスとそれほどサイズは変わらない子がよく含まれている。
TPオスの体色が褪めると、どちらがハーレムの主なのか分からなくなってしまうくらい。

今年、伊豆でもオトメベラの産卵が見られているようだが、何とTPオスの大きさがたった10cm!!
これは屋久島ではどのメスよりも小さく、若魚サイズと言ってもいいくらいの大きさだ。

逆に言うと屋久島の若魚やメスが伊豆に行ったら間違いなくハレムのボスになれると思う。。。(笑)

しかし、すでに5-6cmくらいから幼魚時の背ビレの斑紋は消えてしまうらしいので、間違いなく成魚であることは確かなようだ。
ちなみに屋久島では8cmくらいでもまだ背ビレの斑紋はクッキリ残っている。

背ビレにまだ黒斑の跡が残る若魚(8cm)
背ビレにまだ黒斑の跡が残る若魚(8cm)
典型的なメスの色彩(10cm)
典型的なメスの色彩(10cm)

今日、一番探していたのが、川本さんの言う、ミニTPオス(?)だ。
全然見つからなかったのだが、もうエアがカスカス状態のエクジット直前に1匹見つけた!!!
体長は10cm程度なのに真っ青!
撮りたかったけど、撮れなかった~!!!!
だって、マジでエアがカスカスなんだもん。。。いつもこのパターンが多いなぁ。。。(ーー;)

明日は午前中に潜って、産卵とこのチビTPを狙ってみる予定。

屋久島では稀なオウギチョウチョウウオ
屋久島では稀なオウギチョウチョウウオ
ウスサザナミサンゴ群落のすぐ近くで屋久島では稀なオウギチョウチョウウオの若魚を見つけた。
これっていつ入り込んだんだろ?
気づかなかった!!!


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12 Comments

  1. 普通種なのによく考えると何だか謎だらけのオトメベラの生活史。。。場所や状況によって産卵方法が大きく変わるのは想像できるが、生活史までもが違うのではないだろうか?まずは屋久島でのオトメベラの社会構造を調べてみようと思った。 http://t.co/XMEUN1N9

  2. #yakushima #divingJP 普通種なのによく考えると何だか謎だらけのオトメベラの生活史。。。場所や状況によって産卵方法が大きく変わるのは想像できるが、生活史までもが違うのではないだろうか?まずは屋久島でのオトメベラの社… http://t.co/iRBuQDjo

  3. いやぁ、楽しそうなお話になって来ました。これからの展開に期待しています。

    ちなみに、富戸のオトメベラではミニTPは見た事がありませんが(と言っても
    屋久島基準では10cmでも「立派な」ミニなんですよね)、コガシラベラ(これ
    も、ガンガン産卵しているのを初めて今年見つけた)には、何と5㎝のTPが数個体
    現れました。こいつらが産卵させる瞬間は見ていませんが、動きは間違いなく
    オスでした。

    • 実は今日は根吉さんご所望のニシキベラのTPオスを撮るのも目的のひとつでした。
      でも、いな~い!!!!!
      ハードディスクの中に入っていると思うのですが探すのが困難なので、今日も探してきます!!(^^;)

      コガシラベラに関してはもともと小型種なのか、屋久島でも雄はかなり小さいTPを見かけます。
      それでも5cm以上はありそうですが。。。(笑)

      よくニザダイなどは黒潮流域の個体はでかくて、伊豆などでは小さいなんて話をよく聞きますが、このベラ類に関しては単に生息数の違いなどで、伊豆などでは早熟するからではないかと想像しています。

      どう思われますか。。。?

  4. ごめんなさい。少し参戦させて下さい。僕の言っていたオトメ・ミニTPも9~10cm程度でした。shigeru 君が上記しているその場所での生息数の違い(・・・例えば、根の上とかのようなある種独立した場所であれば、範囲は狭い事もありますが・・・)は大いに関係してると思います。同じ島の近いエリアでも、あるエリアでは比較的に早熟の個体が多く見受けられたりしますし、久米島では、ハコの成魚は通常、13cm~15cm程度ですが、ある場所では、5・6cm程度のTP雄も確認出来ました。因みに、そこまで小さい個体を見つけたのはその場所だけですし、通年、その場所でしか見られません。

    富戸の波さん書いていた5cm程度のコガシラが集団産卵の中だるみ途中に雌相から立派なTP雄に数秒変化し、また、雌相に戻って集団産卵に参加していったという事もありました。どう言った経路で、そうなるのかは、2例の確認例(あからさまな確認例では)しかないので解かりませんが。潮通しの良いポイントでは8cmから12cm程度のTP雄なのに、リーフ内の根周りでは15cm程度のハコやオトメサイズのコガシラ(数は多くなく、ペアー産卵しか見ません)もいる事ですから、早熟の度合いはそのエリアの生息数がかなり関係あると思うのです。

    • 川本さん、どうもです!
      大御所の方からコメントを頂き、とても嬉しいです!(^^)

      川本さんのブログ記事へのコメント(オタクな悩み!?)の続きなのですが。。。

      こいつらってストーカー、もしくはスニーカーである可能性はありませんかね?
      ニシキベラ属のベラ類ではストーカーの存在は中園さんも指摘していますが、スニーカーは聴いたことがありません。

      これは僕の勝手な仮説なのですが。。。
      TP雄を中心とするハレムがある程度安定してくると(安定している地域では)当然ペア産卵が主流になり、オトヒメベラなどのようにスニーカーやストーカーが現れるのではないかと思うのですが、どう思いますか?

      僕のホームグラウンドでは3-4匹の明らかに大きなTP雄がテリトリーをそれぞれハッキリと持っていて、そこにそれぞれ数匹の雌や若魚を囲っています。
      また、近くにはIP雄や雌が集まってきて群れ産卵を行うような場所は今のところ見つかりません。
      そうなると疑問に思ったのが、一次オスはいったいどこにいるのでしょうか?

      つまり、一般的に知られているニシキベラ属のペア産卵を行うTP雄を中心としたハレムの社会形態とは大きく違うような気がするのです。

      ちなみに久米島ではオトメベラの群れ産卵は見られますか?
      スニーキングやストリーキングは見られますか?

  5. ありがとう!しげる!!参戦して迷惑だったかな~と、思っていまいしたので光栄です。

    まず、一つ目ですが、

    オトメベラの群れ産卵(集団産卵)は見られません。まず、僕が知っているエリアではオトメ自体が多くないので、見た事はありませんでした。島事情があるのかもしれませんが、八丈の親方の言うハコベラの集団産卵も自分がはっきり確認するまで「嘘だぁあ~、勘違いだぁあ~!?」っと、思っていましたから・・・・。だいぶ、感覚の差・島事情の差はあるのかもしれません。

    個人的な主観ですが、ストーキング・スニーキング両方あるように見受けられます。これは、個体数が少なくとも、個体数が少なくて、集団産卵を出来なくても、あるエリアの集団・・・、もしくは同族を形成する一因(すみません、大袈裟で・・・、あくまで想像です)としてIP雄や雌は割合はともかくとして現れる(残る)と思っています。そこで、その個体が探す産卵方法ややり方は、僕らが知っているだけでもそうなのですから、まちまちでは・・!?っと思います。全て、観察を踏まえた主観の想像ですが・・・。

    事例を上げた方が良かったのでしょうが、あくまで主観ですので・・・、出来れば「????」っと、思われる方には、直接的な会話の方が解かりやすいと思います。

    追伸・とりあえず、他のハなダイや諸々もなども含めて、対面で話した方が早いかもですね!?

    • ありがとうございます。

      やっぱり、久米でも群れ産卵は見られませんか!
      そうだと思いました。(^_^)

      伊豆まで行ってしまうと基本的には無効分散してしまうようですが、伊豆諸島、紀伊半島、四国の辺りでは屋久島や久米島のように大型のTP雄はいないけど、IP雌雄(多分、ほとんどは冬を乗り切れないのではないでしょうか?)は多く流れ着くみたいですね~
      そういう場所では群れ産卵がシェアを占め、屋久島や久米島のような立派なTP雄がいる地域ではペア産卵がメインとなるようですね。

      ちなみにハコベラも八丈島よりは屋久島の個体の方が大きく立派なんですよ。
      でも屋久島ではハコベラの群れ産卵は見られません。

      > 直接的な会話の方が解かりやすい

      ぜひお会いして、直接ベラ談義に花を咲かせたいです!!(^_^)

  6. しげる君から

     「そんな細かな話をブログで続けるのは営業妨害だ」

    と言われそうですが、ま、ネタを振ったのがしげる君自身だからご容赦願いましょう。

    >> 伊豆などでは早熟するからではないか

    本当に細かな話でごめんなさい。
    たとえば、屋久島と富戸のオトメベラのオスを比較して、

     「伊豆のオトメは早熟」

    と言う議論をする場合には、「早熟」の定義を定めておかねばすれ違った話になって
    しまうと思います。たとえば、屋久島でも富戸でもオトメベラは共に生後2年で性転換
    してペア産卵の縄張りを構え始めるとします。ただし、屋久島の方が水温が高いから(?)
    同一年齢でも体長は富戸のものよりかなり大きいとしましょう。この時、

     「伊豆のオトメは早熟」

    と言うべきでしょうか。つまり、今のオトメベラの議論では、「年齢(月齢)」「体長」
    「体色(IP or TP など)」そして「成熟」を分けて、或いは繋がりを厳密に考える
    必要があると思います。もちろん、水中でそれらをすべて観察する事はできませんが、
    頭の中での整理は必要かと思います。そうした上で、「では、その早熟(幼形成熟)を
    産み出す要因は何なのか」の議論が始まるのではないでしょうか。

    ちなみに、僕自身が、

     「なるほど、富戸の個体は南の島のものより早熟だ」

    と納得できたのは、今年観察したムナテンベラが初めてでした。今のところこの例だけ
    です。

     http://www.onsenmaru.com/log/log-2011/log-111001.htm

    やっぱり営業妨害かしら?

    • いやいや、営業妨害ではないですよ~
      今さら、何をおっしゃいますか!(笑)

      僕のいう「早熟」というのは年数のことではないです。
      ベラの熟成度には年数はあまり関係ないのではないでしょうか?
      むしろ、環境(社会構造や水温、個体数などなど)による要因が成熟度を左右していると思われます。

      ここで言う「早熟」というのは、雌性成熟型における熟成の度合いのことです。
      雌から性転換した二次オスのTP個体が最成熟した状態だと考えた場合、伊豆のTP雄と言っている子は、僕の予想では一次オスである可能性も高いと思っています。
      (あ~言っちゃった。。。もうしばらく調べてみようと思ってたのにぃ~!!!(^_^;))

      さらに和歌山や四国でもその可能性は高く(この辺だったら二次オスのTP個体もいるとは思いますが)群れ産卵の中のTPオスはどうでしょう。。。
      一次オスのTP個体である可能性も考えられませんかね~?

      仮に二次オスのTPだったとしても、必要に迫られて早期(繰り返しますが時間(年数とか)の事ではないです)に性転換してしまったとも考えられます。


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